薬膳的食養生のすすめ

はじめに

中学生の頃、祖父の書斎でみつけた
「医食同源」
という本との出会いが、
食べることが大好きだった 私に
「食を通じて健康を実現させたい」
という夢を与えてくれました。
私は、迷わず「管理栄養士」を目指して
大学に進学し、栄養学を学びました。
学んでいくうちに、
病気を治す「治療食」だけでなく、
病気を防ぐの「予防食」の必要性
を感じるようになり、
予防に重点を置く中国伝統の医学(中医学)
に興味を持ち始めました。

病気になってから
あれこれ処置を施すのではなく、
“病気なる前に身体を正常に保つことが大切”
であるというのが、中医学の考え方です。

これを実現する手段として、
日々の食事ほど有効なものはありません。
そこで「薬食同源」の考えのもと発展したのが
「薬膳」です。

薬膳とは

薬膳とは、
中医学の理論に基づき、
旬の食べ物や
気になる症状に合った食べ物を用いて、
体調を整える食事のことをいいます。

薬膳と聞いて、
漢方生薬が入ったクセの強い料理を
想像されるかもしれませんが、
「薬食同源」の考えから考えると、
日常私たちが食べている食べ物
すべてが薬膳となります。

陰陽五行

中国古代の自然観から生まれた
「陰陽五行」という思想は、
万物は「陰」と「陽」の相反する 二つが
協調しながらバランスをとって
生成しているという
「陰陽説」と、
木・火・土・金・水の五つ元素が
万事を動かしていくという
「五行学説」
の二つの概念が統合された世界観です。

人間の身体も自然の 一部ととらえています。
季節の変化に応じた食事を
意識することで、
身体の自然治癒力を高めてくれます。

陰陽説

陰陽説では、
太陽に向いている方が「陽」、
太陽に背を向けている方が「陰」
ということを基本としています。
昼は「陽」、夜は「陰」。
季節でいうと春夏は「陽」、
秋冬は「陰」ということになります。
このように「陰」と「陽」は、
一つの物事の中の二つの異なる側面なのです。
上がなければ下がない、
外側がなければ内側がないのと同様、
どちらが欠けても成り立ちません。
したがって、
何事においても陰陽のバランスが大切になり、
バランスが保たれていれば平穏に、
乱れればトラブルが生じるとされています。
人間の身体も例外ではなく、
様々な病気も
この陰陽のバランスが乱れたところから
引き起こされるという考え方です。

五行説

五行は、
木、火、土、金、水という
五つの要素を取り上げ、
それぞれの関係性を見ることで、
人間や生活などすべての関係性
を理解しようとする考え方です。
「木」があるから「火」が生まれ、
「火」が燃え尽きて「土」に帰る。
「土」の中から「金」が生まれ、
「金」の周囲には「水」が生まれ、
「水」おかげで「木」が育つ
という理論です。

世の中が循環運動の関連で成り立っている
ということを説いています。
物質は、孤立し、静止しているのではなく、
互いに協調関係を維持しながらも
対立したり、助け合って存在しています。

薬膳では、
五季(季節)、
五気(気候)、
五色(色)、
五味(味)、
五臓(臓器)、
五志(感情)など、
自然や人間の身体の活動すべてと
相関関係を持っていると考えています。

次回は、
具体的に季節の薬膳の紹介をしていきます。


この記事を書いたのは:川口朋子

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